【有田圭一】「移動する」を考える③(動き出しとスイング始動)

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前回は「目線位置を低く構える」「床を蹴るよりも膝を抜く抜重で」などををテーマに考えてみました。

では具体的にどう動きだしていくのかを今回は考えたいと思います。

追いつけると焦りが少ない

スムーズに動き出せるようになると、シャトルへ早く追いついたり、疲れ方が小さくなったり、打つまでの時間が多くなると相手の予測をふまえてショットを選択できるようになります。

そうなると返球を読まれているという焦りが少なくなり、相手に先手を取られるラリーが少なくなります。

バドミントンは「相手のショットよりも遅れて動く」ことが多いので、遅れてからでもショットを焦らずに選択できると、相手は「このショットが来る」と予測しきれないので読んで先に動くことが難しい状況となります。

そういうやりとりを上級者になればなるほど細かいところで行っています。

フットワークの指導場面で気づいたこと

「まずシャトルに追いつく」ということを考えて、選手にフットワークを指導する過程で気づいたことがあります。

後方2点へセンターに戻りながら“くの字型”に動いたり、両サイドへ動いたりとしていくのですが、シャトルのイメージが伴っていないのか、どこにどんな球を打ち出しているのかを周りから見ていてわかりにくく、

選手に「今のは何を打ったの?」と聞くと「こういうショットです」と具体的に答えられない場合もありました。

そしてある程度動き方が身についてきたところでシャトルを打たせてみても、フットワーク練習での形はできているのですが、

シャトルは常に同じタイミングや場所には来ないので、タイミングや位置のずれが、意図しない方向、強さのショットになってしまう選手もいました。

スムーズな動き出しを意識しても…

私自身のプレーを振り返ってみると同じ事が起こっていました。

まず相手はコースやタイミングを読まれないように打ってくるので、動き出しが遅れる場面は多々あります。

なんとか抜重を使って動き出して間に合わせるのですが、最終的には意図しない方向へシャトルが飛んでいくことは多く起こりました。

もっとうまくフットワークを使い、もっと相手のラケットを見てショットを予測しなければと思いながら練習を積み重ねていました。

以前に記しました「シャトルをずっと目で追うのではなく、できるだけ早く相手のラケット面を見て予測する」という意識は非常に有効でした。

しかしそれでも少しでも出遅れるとショットのコントロールが難しくなりました。

道具の性能は良くなっている

私はヨネックス社の「カーボネックス20」を使っているのでわかるのですが、30年以上前に発売された当時と比べて微妙ですが質は変わってきています。

シャフトは固くなってきています。

また使用しているガットも当時はゴーセン社の「ハイシープ」でしたが、今はヨネックス社の「BG80」を使っています。

これがいいかどうかはさておき、ラケットやガットもメーカーさんの努力で進化してきているはずです。

以前は強くラケットを振り抜かないとシャトルは強く返せないイメージがありました。

しかし現在は衝撃によるラケットの歪はより少なく、強く反発できるようになっています。

つまり、シャトルを強く飛ばすイメージは大きく振りかぶって、強く振り抜くというイメージではなくなってきているということです。

小さくコンパクトに振ってもシャトルは強く返せる時代になってきたわけですね。

動き始めはラケットヘッドから

リオデジャネイロオリンピック女子ダブルスで金メダルに輝いた松友選手のオーバーハンドは非常にコンパクトで、私自身もいいイメージモデルとして練習に取り入れてきました。

この打ち方だと打った時の反動が小さく、次に構える時間が短くできたので連続でスマッシュが打ちやすくなりました。

打つ前にラケットヘッドをすっと顔の前近くへ上げて最短距離でのラケットヘッド移動で打ち込むイメージです。

そんな中、TAGOKENさんのYoutubeを見ているとネットやスマッシュリターン、ラウンド側のオーバーヘッドストロークなど様々なショットでも、

まずラケットヘッドをシャトルに合わせて(近づけて)から押し込むように打っていくと安定すると説明されていました。

さらに藤本ホセマリ選手の講習会でも、特にドライブ系を返球する時のラケットヘッド位置はおへその少し上あたりで、

顔のあたりに来る球は肘を下げてラケットヘッドを上げ、膝あたりへ来る球は肘を上げてラケットヘッドを下げると説明されていました。

できるだけ早くラケットヘッドをシャトルの位置へ移動させるといいということですね。

「現在の主流はこれなのかもしれない」

と感じたので、自分のラケットヘッド操作を変化させました。

特に下の球を触らされた時にはラケットヘッドが下がった状態になっていることが多かったので、意識して上げるようにしました。

  1. ラケットヘッドは体の前へ位置させるように出す(おへその上あたり)
  2. 相手のラケット面を見る
  3. 相手のショットにラケット面を合わせるように移動させる
  4. ラケットに引っ張られるように体が移動し、足がついていくイメージ
  5. ラケット面を最も相手コート遠い位置へシャトルを運べる位置へ移動させる
  6. 足の着地を伴うタイミング、もしくはジャンプを伴ったときは体が下がるタイミングでラケット面を線軌道でシャトルを押し出す

― ひとこと ―

ラケットは軽くなったとはいえ、シャトルのコントロールは非常に微妙ですので、ラケットヘッドはあらかじめシャトルに近いところからできるだけ離さないようにすることで、安定してシャトル打ち出すことができました。

トッププレーヤーのラケットヘッドさばきは速すぎるため動画などでも見えにくいところです。

藤本ホセマリ選手はショートサービスへの対応が非常に巧みで、一旦ラケットヘッドをシャトルに合わせてから素早く引き、押し込むことで相手の足を止めてから外すのでとても分かりにくいショットとなっていました。

ご参考までに。

<Youtube動画>世界シニア男子ダブルス40歳 VS 45歳(BadmintonAcademy.TV)

この記事を書いた人有田圭一有田圭一
バドミントンの名門校として有名な、「東大阪大学柏原高校」バドミントン部元顧問 バドミントン協会公認コーチ 短期間で、選手を劇的に成長させるその指導手腕が注目され、 これまで数多くのバドミントン雑誌で取材を受ける。 また、バドミントンの技術研究と、効果的な上達ノウハウの普及活動に余念がなく、 全国のバドミントンプレーヤーに人気のサイト、「バドミントンアカデミー」を運営。 選手としては、中学から大学在学中まで、バドミントンをプレーしており 個人戦で、継続的に全国ベスト16~32の成績を残した、優秀な選手でもあった。 シニア選手としても活躍し、全日本はもちろん、世界シニアにも出場している。
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