【有田圭一コーチ】バドミントン指導者が考えたい経験とは?

有田圭一

このコロナ禍でほぼ対外試合がなくなり、「何のためにやっているのかわからない」という声をよく耳にするようになりました。

何のためにやるのかを真正面から突きつけられ、考えさせられるということが起こっています。

今後もしばらくは、多くの対外試合が行われないかもしれませんし、練習場所さえ確保できなくなるかもしれません。

やめていく人たち

私の友人達もとても強かったのですが、何人もバドミントンから離れていきました。

全国大会で優秀な成績を収め、推薦で大学まで進学しましたが「もうバドミントンはいい」と言葉を残してやめていきました。

それまで授業料免除などの待遇を受け、トッププレーヤーの最前線を走っていましたが。

もちろん、やめてしまうことに関してはそれぞれの人生です。

良い悪いはありません。

いろいろな事情があったのでしょう。

やめてから、違う場所で活躍している人も多くいると思います。

しかし、同年代の人達がやめていくのは、寂しいものがありました。

逆に、しばらくやめていたが最近また始めて、試合などで会えるととてもうれしい気持ちになることもありました。

私はトップレベルには到達できなかったので、全日本総合などに出場できたことはありません。

その当時、全日本総合に出場して活躍していた選手たちは私にとっては憧れで、そして追いかける目標ではありましたが、今となっては大切な仲間だと思っています。

相手がどう思おうが、私が勝手に思っています。

やめた人に久しぶりに会ったとき、「もうやらないの?」と聞くと、「当時勝ってた相手に負けるのが嫌」という言葉を聞きことがありました。

気持ちはよくわかります。

私も一応全国大会には出場したことがあったので、勝ったことのある相手や知らない相手に負けるのは嫌でした。

やはりこういう世界には

  • 勝ったことがある
  • 負けたことがある

という経験から、今でも「格付け」なるものを意識するのだなと改めて感じました。

勝ったことのある相手は気にしないか、蔑んで見ていたのかもしれません。

負ける経験

全日本シニアでは、そういう逆転が多く起こります。

30歳代では、私がそれまでに知っている有名選手は出場することが少なかったので、対戦相手は知らない人達がほとんどでした。

もちろん中学・高校の全国大会に出場するには、県で2位や地域で3位までに入らなければならないので、もともと出場人数は絞られています。

しかし、全日本シニアでは出場枠が急激に広がるため、ほぼ知らない人たちとの対戦になります。

しかし…出場したことがある人はわかりますが、ぱっと見てあまり強そうでなくても、

  • 戦術が巧み
  • 得意ショットが厳しい

など、初戦から競り合うことが多くありました。

私は初めて出場したシングルスで、「この相手なら大丈夫だろう」と油断し、ほとんど負ける状態にまで追い詰められたことがあります。

最後は、連続ボディスマッシュを打ちまくりなんとか逆転しましたが、その時に全日本シニアの恐ろしさを味わいました。

それからほぼ連続出場していますが、なかなかトーナメントは上まで上がれません。

年代が上がる初年度は少し勝ち上がれますが、年々に初戦から厳しくなっていきます。

それだけ「知らない人」に負ける経験をすると、もはや「勝ったことのある相手に負けるのが嫌だ」というちっぽけな感情はどうでもよくなりました。

どれだけ試合までに準備したかが確実に問われ、それなりの結果がついてくるのです。

40代に入ると、勝ち上がっていく人と知り合う中で、その人たちも初戦から競り合ったり、敗退してしまう様子を見ていると、この大会は面白いなと心から思えるようになっていきました。

準備する人たちの様々な様子が観れるようになったからです。

私は、黙って一人でじっくりと準備するのが好きです。

終始を見ているわけではありませんが、中には

  • ジャンプしたりダッシュしたり、フットワークをしたりと強度の高い準備をする人
  • 音楽を聴きながらジョグでじ〜っくりと準備する人
  • 仲間達とおしゃべりしながらリラックスして準備している人
  • いろいろなストレッチ用具で準備している人

などがいました。

見えるところは人それぞれですが、皆、心に熱いものがあるのがわかりました。

目の奥が真剣でした。

そして、暖かかったです。

負けささない経験

自分が試合に出場する傍ら、高校生の指導にも携わっていました。

「負ける」という経験から多くのことを学んでいた私は、その経験を生徒に伝え、そこから多くのことを学んで欲しいと考えていました。

しかし、いろいろな指導者の話を聞くと、練習試合では

  • 負けるとモチベーションが下がるので勝てる相手と対戦させる
  • どうせ勝てないから連れて行かない

という言葉を聞いて、疑問に思っていました。

私がバドミントンを始めた当初は、指導に従っていると勝てるようになっていったので、モチベーションは下がりませんでした。

しかし、それまである程度勝ってきた高校生に対して

  • 負けたらやる気がなくなるの?
  • 将来的にそんな選手強くなるの?

と思っていました。

そんな中チーム内では、競り合うトップ二人が存在することが何度かありました。

しかし、あまり校内では対戦させていませんでした。

なぜかを聞くというと、「雰囲気が悪くなるから」でした。

「ほんとに?」と少々反発気味だった私は、生意気に見られていたと思います。

最近、トッププレーヤーで活躍している本人達に当時の話を聞くと、「校内で対戦しても問題なかったです」と返ってきました。

「やっぱりもっとやっておけばよかった…」と、今更ながら後悔するのでした。

勝ち負けなどの結果によって、モチベーションは一時的に上がったり下がったりするとは思います。

私も勝てば嬉しいですし、負ければ悔しいですから。

しかし、全日本シニアチャンピオンに「勝って何か得た?変わった?」と聞いてみても、「勝ってもなにもない」と返ってきました。

もちろん、勝ってみないとわからないことがあります。

勝つために精進したことで、多くのことを得ているはずですが、それは目に見えないことが多いのでしょう。

だから、指導者もそういう見えない部分を信じて、経験させることに不安を感じていたのだと思います。

長くなりましたので今回はこの辺で。

― ひとこと ―

当時まだ若く、少々尖っていた私はまだまだ未熟でした。

年齢を重ねてきてはじめて、残りの時間が少なくなっているその状況でどう考えたかを思うと、共感できる部分はたくさんあります。

人は体が老化していくと、できないことが増え不安になってきます。

しかし、それが人というもの。

その状況を受け入れることで、そうなってからでないと生み出せないものもあると思っています。

心を「あきらめ」で老化させてはいけないと思っていますし、逆に若返らせることができると思っています。

私の妻もバドミントンをするのですが、最近ストレッチングやヨガを毎日実践しています。

その効果がプレーに現れてきたのか、いま逆に強くなっているような気がします。

私も、老化をたどる一人の人間として、まだまだあるだろう”伸びしろ”を信じて挑戦していきます。

この記事を書いた人有田圭一有田圭一
バドミントンの名門校として有名な、「東大阪大学柏原高校」バドミントン部元顧問 バドミントン協会公認コーチ 短期間で、選手を劇的に成長させるその指導手腕が注目され、 これまで数多くのバドミントン雑誌で取材を受ける。 また、バドミントンの技術研究と、効果的な上達ノウハウの普及活動に余念がなく、 全国のバドミントンプレーヤーに人気のサイト、「バドミントンアカデミー」を運営。 選手としては、中学から大学在学中まで、バドミントンをプレーしており 個人戦で、継続的に全国ベスト16~32の成績を残した、優秀な選手でもあった。 シニア選手としても活躍し、全日本はもちろん、世界シニアにも出場している。
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