【有田圭一】「移動する」を考える①(フットワークの形とリズム)

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前回までは「打つ」に関して考えてみました。

今回は「打つ」までの「移動」の動きについて、私なりに気づいたことをお話ししたいと思います。

ラケットを出せば届く範囲にシャトルが来れば、さほど移動せずに返球することができます。

ここで「さほど」と書いたのには実は訳がありまして、手を伸ばして当てるだけだとコントロールが難しいという意味合いを含めています。

「打つを考える」でもお話ししましたが、シャトルコックは当てるのではなく運ぶという動作を行わなければコントロールが非常に難しい物体だからです。

話を戻しますが、相手が自分の位置よりも遠くにシャトルを打ってきたとき、シャトルに追いつけないと相手コートへ返すことはできません。

これは明白な事実です。

しかし、追いついたとしても先ほど話しましたラケット面を運ぶ動作をスイングに入れなければ、

シャトルはネットの高さから浮いてしまったりして相手にチャンスを与えかねません。

どこへどのように移動するのか

シャトルに対してどの位置まで移動すればいいのか。

それは相手コートの「一番遠いところ」を狙えるような位置が大切だと元日本代表の福万尚子さんが講習会でお話しされていました。

例えば右側のフォア奥にシャトルが来ると、相手コート左奥までシャトルを運べるイメージができる位置と体勢が作れるかどうかが大切であるということです。

バドミントンを習い始めるとフットワークやそれぞれのリズム等があることが徐々にわかってきますが、まずは走ってでも何でもいので速くその位置まで移動するということが大切だと話されていました。

そしてシャトルの後ろに位置できる直前から細かいステップを使い、体勢とリズムを整えながら左手をしっかりと挙上させて、シャトルを打っていました。

そのバランスの整え方はとても滑らかで、見ていて「これが世界級か!だからショットがブレないのか!」と驚いたものです。

フットワークの形とリズム

私は中学校から本格的にバドミントンを習い始めました。

当時の指導者はそれは素晴らしい方々だったので、技術を真似ていくだけで上達していきました。

先生のフットワークを見ていると、とても滑らかなリズムでまるで舞っている、踊っているかのような動きで「バドミントンって美しいな」と感じたものです。

そういうイメージが強かったのか、私の指導場面ではまずフットワークの足の運び方やリズムなどを教えることが主流となっていました。

しかし、初心者などを指導していて足運びやリズムがそれなりによくなったとしても、それだけではシャトルの後ろまで移動できなかったり、リズムが狂わされると正確に打ち返せないという場面がたくさん出てきました。

最近の動画(TAGOKENさんなど)を見ていてもトップ選手がフットワークについて話されているのは、足をああしてこうして動かすというよりも、まずシャトルの後ろに早く移動することが強調されています。

後ろを向いて走っても、後ろ走りでも何でもいい、足運びやリズムはその後で身についてくるという内容にショックを受けた私は指導方法も変えなければと思いました。

放物線で移動する

シャトル方向へどう移動するのがいいのでしょうか。

何に対して「いい」のかを考えた時、私が最初に考えたのは

「最短距離を移動して余計な体力を使わない」
「最短距離でシャトルまでの時間を短くしたい」

でした。

もちろん合理的な考え方だと思います。

しかし福万さんの話によるとそれだけではうまくいかない場合があるということでした。

シャトルを打ち出す方向は相手コート、さらに一番遠い場所だとすると、

後方へ来たシャトルに対して直線的に移動すると一番遠い場所へ打ち出すことが難しくなるということでした。

前方へ移動するときはより直線的でいいのですが、特に後方への球に対しては、シャトルに対して直線的ではなく、「(横にした)放物線」を描くように移動しないと強く奥まで運ぶのが難しいとのことでした。

つまりフォア奥から相手コート左奥へ打つためには、いったんコート後方に移動してからシャトルの右後ろ後方へ回り込むというイメージです。

体力の消耗を防ぐというよりも、相手に主導権を渡さないよう常に攻撃を含んだショットを打つことを優先するということですね。当然だと思います。

体力をセーブすることも大切ですが、それ以上に相手を疲れさせるにはいいショットを打たなければなりません。

トップ選手に話を聞くことができて本当に勉強になりました。

ーひとりごとー

シャトルの後ろに入れなければ一番遠くに運べる体勢が作れず、返そうと思っていても返している自分の姿がイメージできません。

逆に打てない姿がイメージされるとその通り再現されてしまいます。

もちろん相手は少しでもこちらの体勢やリズムを狂わそうとしていろいろな変化をショットに加えてきます。

しかしサービス場面では制約が大きく、ショットの変化は少ないので(もちろん上級者になればいろいろな技で先手を取られないように仕掛けてきます)、

そのやり取りでいかにいい体勢でシャトルを打ち込んでいくかが非常に戦略的にも重要になってきます。

立ち位置やラケットヘッドの位置、力んでいるかいないか、今に集中できている表情をしているかどうか、

呼吸が早いか遅いか感じ取れないかなど、常に相手を観察をしていますし、こちらも相手から観察されています。

ラリー間はそういう観察の勝負になっているから相手に弱みを見せる姿は普段からなくした方が有利になるとも話されていました(福万尚子さん)。

膝に手をついたり、悔しがったりなど、姿勢的にも感情的にも平静を装う習慣が大切ですね。

この記事を書いた人有田圭一有田圭一
バドミントンの名門校として有名な、「東大阪大学柏原高校」バドミントン部元顧問 バドミントン協会公認コーチ 短期間で、選手を劇的に成長させるその指導手腕が注目され、 これまで数多くのバドミントン雑誌で取材を受ける。 また、バドミントンの技術研究と、効果的な上達ノウハウの普及活動に余念がなく、 全国のバドミントンプレーヤーに人気のサイト、「バドミントンアカデミー」を運営。 選手としては、中学から大学在学中まで、バドミントンをプレーしており 個人戦で、継続的に全国ベスト16~32の成績を残した、優秀な選手でもあった。 シニア選手としても活躍し、全日本はもちろん、世界シニアにも出場している。
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