【有田圭一コーチ】「ダブルスの役割」を考える①ダブルスにおける前衛の役割とは?
ダブルスのフォーメーション
シングルスは、相手からの返球を自分自身が取らなければならないので、役割は単純です。
- 決められないように相手コートに入れる
- 自分が攻め続けられるように返球する
ことです。
しかし、ダブルスでは2人いるので、大きく分けて
- 前衛
- 後衛
- サイドバイサイドの右側
- サイドバイサイドの左側
の、4ポジションがあります。
攻め方・守り方の考えは、ペアによって変わることもあり、前後左右をあまり入れ替えない場合もあれば、くるくる回りながら入れ替わる場合もあります。
動画を通していろいろなダブルスを見ていると、やはり基本的に入れ替わらず、強い形を維持することが多く見られました。
前衛が得意な人はすっと前に入り、後衛が得意な人は沈めながらペアに前のスペースを空けて入るよう促すような動きが見られました。
強い球で決めたい欲望
サービスからのやり取りでは、
- 相手のいないところに押し込んだり
- あえてぶつけたり
- 前衛と勝負するために沈めたり
- かわしたり
するのが基本です。
レシーバーは押し込んだ後、そのまま前への返球を狙うのが基本です。
が、強い返球ばかりを待っていると、逆サイドコースに打たれるとあっという間に形勢が逆転して、上げさせられる展開になります。
私がこのショットでよくかわされてしまうので、なぜなのかを考えてみると、「相手の強いレシーブを強く打ち下ろして決めたい」という欲のイメージが強く頭に残ってしまい、その場所に居着いてしまっていることに気づきました。
逆に、強い球をラケットに当てるだけだと、「負けたような感じ」を持ってしまっていることにも同時に気づきました。
私が理想としているプレーヤーのヘンドラ・セティアワン選手(インドネシア)のプレーを見てみると、前衛で強くするどいレシーブに対してはラケットを振って打ち込むのではなく、しっかりと止めて沈め、次の球へのタイミングをはかっていました。
一方、私自身の前衛を見てみると、緩い甘い球でしか落とすことしかできていなくて、相手にとってはさほど難しい球ではなく、逆にそこから攻めに転じる展開へと運ばれていました。
さらに観察すると、ラケットを上げるのが遅く、ラケットを上げたときには頭上をシャトルが越えていることも多くありました。
ラケットを上げるのが遅いと、その方向へ移動することも遅く、例えばクロス方向へカウンターレシーブを打たれた時に、ラケットを先導させて後方へ下がるのも遅れてしまいます。
つまり、前衛の役割を全く果たせていなかったことに気づきました。
前衛の役割
前衛の役割は、
- 相手が前へ返球してきた球を押し込んでさらに追い込むこと
- 強い返球に対して当てられる範囲で沈めて再度上げさせること
- 逆サイド奥へのカウンターレシーブを沈めて攻め続けること(特に後衛のバックハンド側)
でしょうか。
練習相手の前衛を見てみると、ラケットをラリーテンポに合わせて、ラケットヘッドを確実に上げて打ち下ろせるタイミングができています。
さらには、当てて沈めることができる上に、余裕があればそこから強く押し込むことができていました。
練習後、相手の方に話を聞いてみました。
すると、「前衛からのプッシュ(押し込み)がないので安心してレシーブできる」とのことでした。
攻めるイメージ
前衛で返球を止め、できれば押し込みたいのにできない。
なぜ、できないのか。
もちろん
- ラケットを上げる準備が遅い
- 位置が前過ぎたりセンターに寄りすぎていたりする
など、時間的・位置的な問題もあると思います。
しかし、それ以上に
- ペアのスマッシュの音
- 後ろから頭上を越えていくスマッシュのイメージ
を、よく覚えていませんでした。
覚えていないということは、その音でのショットの強さやコースで、どういう展開になったのかという良いイメージも作れていないことになります。
攻めのイメージが、感覚的にぼやけていると感じました。
不安感
攻めるイメージが曖昧だと、思い切って動けず、エラーをしないためだけの受け身イメージになってしまっている可能性があります。
もちろん、エラーしないようにすることは大切です。
しかし、甘い球をきっかけに攻めに転じられてしまうと、エラーを誘われる確率が上がってしまいます。
まさによく言われる、「攻撃は最大の防御なり」ということでしょうか。
その時の私の前衛での思考は、
- クロスカウンターレシーブを食らったらどうしよう
- 強いレシーブが来たら止められないかもしれない
という、マイナスイメージや受け身のイメージが多くなっていることに気づきました。
「前衛から打ち込んで決めに行かなければ、いつか切り返されて不利になってしまうかもしれない」とまで思っていました。
このイメージでは打ち込めるはずもありませんし、上で止めて落とすこともできない可能性があります。
「強いペアは2人で相手1人を攻め切る」と話されていました。
最初から振られるイメージがあると、後衛のスマッシュをより効果的に、前衛からも攻め続けられない可能性があります。
感覚を経験する
前衛は、基本的に相手のレシーブを触れる範囲で、上から下へ落とすだけで大丈夫だと思うこと。
そのためには、“レシーブで追い込まれたらどうしよう”イメージではなく、「止めて次を待つ!」とイメージができればいいと思います。
- ペアのスマッシュ音
- タイミング
- コースを視覚と聴覚
- 床との触覚
をしっかりと感じてラケットヘッドを準備すれば、うまくいった時とうまくいかなかった時の違いが感覚とともにイメージ化され記憶に残るようになります。
それを体験してから、うまくいかない時のイメージでは、「球を捨てる」ことができるようになると思います。
「球を捨てる」判断が早くできるようになると、後衛の迷いが少なくなります。
そうなれば、2人のコンビネーションがうまくつながり、2人で相手1人を攻め切ることができるようになると思います。
次回は、後衛の役割について考えたいと思います。
-ひとこと-
自分のイメージと実際の動き、フォームがずれていることは、実は多く起こっていると思われます。
映像で見てみると、”そんなにラケットが上がっていなかったのか”と驚かされました。
トップ選手のいいフォームを見ながらイメージして、それを実際にやってみたのを見てみて振り返る。
この作業自体でも、いい練習になると思います。
バドミントンの名門校として有名な、「東大阪大学柏原高校」バドミントン部元顧問 バドミントン協会公認コーチ 短期間で、選手を劇的に成長させるその指導手腕が注目され、 これまで数多くのバドミントン雑誌で取材を受ける。 また、バドミントンの技術研究と、効果的な上達ノウハウの普及活動に余念がなく、 全国のバドミントンプレーヤーに人気のサイト、「バドミントンアカデミー」を運営。 選手としては、中学から大学在学中まで、バドミントンをプレーしており 個人戦で、継続的に全国ベスト16~32の成績を残した、優秀な選手でもあった。 シニア選手としても活躍し、全日本はもちろん、世界シニアにも出場している。
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