【有田圭一コーチ】「ダブルスの役割」を考える②ダブルスにおける後衛の役割とは?

有田圭一 ダブルス

前衛と後衛の役割を考えていると、最もはっきり役割が分かれている種目はミックスダブルスだと思われます。

基本的に

  • 男性は後衛
  • 女性は前衛

に、位置する形で攻撃を続けます。

逆の形にさせられないように、前衛も後衛も簡単に上げないように気を付けます。

この「簡単に」というところの意味が大切で、上げるのを相手に予想されてしまうと

  • 良い体勢で打たれやすくなる
  • 女性が後ろへ移動させられる
  • 男性にも緩急を混ぜたショットで揺さぶられる

など、ラリーをコントロールできなくなってしまいます。

しかし、二人ともレシーブ力がある場合は、高く奥までクリアやロブを打つのは相手のスマッシュなどを切り返して攻撃に転じることができるので、有効だと言えるでしょう。

以前、社会人レベルですが強いミックスダブルスを見てみると、男性はしっかりと奥までロビングを上げていました。

そこから、しっかりとレシーブしてから相手の隙を伺っていました。

しかし、意外と思い切って奥までロビングを上げるのは難しく、「上げたらすぐに下がってレシーブをしなければならない」というイメージが先行してしまうと、「強い球を打たれて決められたくない」と考えがちになります。

そうなると、「決められるイメージ」が頭の中で作られるため、ロビングを打つ時に腕などがこわばってしまいかえって甘いロビングになってしまい、結局打ち込まれてやられてしまうことが現実化されてしまいます。

ゴルフなどで、「バンカーに入れてはいけない」と思えば思うほど、「バンカーに入れてしまう」ことが起こるのと同じですね。

このマイナスイメージを作らないようにするには、どうすればいいか…

レシーブ力が高ければ問題ないですが、なかなか私もそういうイメージを払拭できないこともありますし、下がっているつもりでも実際にはあまり下がれていなかったりと、理想と現実との差に驚かされることはあります。

後衛の役割とは?

以前、全日本シニアで連覇をしていたミックスダブルスと対戦したことがあります。

この試合での後衛男性のショットが印象深すぎて今でも忘れられないのですが、とにかく前へ沈めるドロップやハーフショットがネットから浮かずに入ってきます。

前で押し込んでやろうと待っていたとしても、プッシュできません。

これは、ネットを超えて入ってくるシャトルの角度が約45度という、藤本ホセマリさんが講習会で仰っていた「シニアに効くゴールデン角度」だったなと今になると思います。

男性のドロップを前に落とすと女性に打ち込まれ、上げたら男性に攻められ、女性をかわすように少し高めを狙って打つと、男性はそれを見越したかのようにジャンプして打ち込んできました。

なすすべがなかったことを、思い出しました。

後衛は、前衛によりネット前近くから仕事をしてもらうとともに、前衛のプレッシャーをうまく利用して、そこから逃げてくる球を上から打ち込み続けます。

ダブルスでは、攻め続けることが鉄則です。

後衛は一番シャトルを多く触るので、役割は地味かもしれませんがとても大切です。

ゴールデン角度

強い球は、いい武器になります。

しかし、強い球ばかりでは相手の切り返しが早いと連続で打っているうちに疲れたり、揺さぶられたりして攻め込まれてしまいます。

ミックスダブルスにみられる攻撃の形は、強い球よりも弱い球をいかにうまく使うかがカギになってきます。

強い球に、女性がついていけないことがあるためです。

そして、強い球を打ちたくても相手にリズムを狂わされてしまうと、良いタイミングでシャトルの後ろに入れません。

そのために、相手に主導権を握らせない「ゴールデン角度」によるドロップショットは、是非練習で身につけておきたいです。

私の最近の練習でも、強く打つたびにレシーブで追い込まれて疲れ、最期には前から押し込まれて負けるというパターンが多くなっています。

もちろん、スマッシュ力も弱くなっているからかもしれませんが、「相手に攻めさせないショットはある」ともう一度考え直さなければならないと思っています。

なにげない、とりあえずのつなぎ

ネット前までの距離感・打球感を一定にするためには、常に打点を意識しておかなければなりません。

そして、ラケットをできるだけ立てて打つことで、打点の高さを維持するようにします。

そのためには、「常にスマッシュを打つぞ!」とイメージする必要があり、それに飛びついて打ち込むという経験も積んでおく必要があります。

この記事を書いている私自身を振り返ると、最近の基礎打ちで相手のレシーブが甘く返ってくると、ついついラケットを下げてつないでしまうショットが多くなっていることに気づきました。

こういう球を「強く打つぞ!」と相手に見せて、相手がそう感じるのを観察する練習をもっと繰り返す必要があると気づきました。

改めて振り返りながら考えてみると、克服すると楽しくなるような課題が見えてくるものですね。

次の練習が楽しみです。

どちらが前衛、後衛?

長く組んでいるペアなら、役割が二人ともイメージできている場合が多いです。

が、ペアになってまだ年数が浅い場合や初めて組んだペアなどは、どう動けばいいかわからないこともあると思います。

トップアンドバックの時は、基本的に前衛が下がりたければ下がります。

前衛は後ろが見えませんので、思い切って動きます。

しかし、サイドバイサイドからどう動いて攻撃するのが効率がいいの?というときは、どうすればいいでしょうか。

端的に言えば、「早い者勝ち」です。

遠慮していると、いつまでもお互いの考え方がわかりにくいものです。

ぶつかることもあるでしょう。

しかし、負けたくてプレーしている人はいません。

みな、勝ちたいと思ってプレーしています。

お互いの主張を、うまく混ぜ合わせる。

つまり、お互いのやりたいこと・得意なことを組み合わせる方が、いい動きにつながります。

早く移動したとしても、必ずシャトルを触るわけではありません。

前に位置することで、相手に前に落とせないというプレッシャーをかけるという役割を担うこともあります。

「これが私の狙いです!」と、主張してしまえばいい時が多いのです。

迷っていると、いつまでも二人の体や心の隙間を狙われて攻められ続けます。

  • これをやらなければならない
  • これはやってはダメ

というのも、相手次第です。

時には、ダメだとされる事が効果的な場合だってあります。

大切なことは、ペアや相手のことを思いながら自己主張すること。

それを繰り返すことで、相手の主張を感じられるようになってきます。

相手の戦略の意図が感じられない時は、ただの反応・逃げ・欲の場合があります。

定石と言われる形を練習しておくことは大切ですが、そこに戦略の意図を感じていないと、それを外してくる相手には対応が難しくなります。

この辺りが、盤面上の戦いでもある囲碁や将棋と非常に似通っていると感じます。

シンプルに作戦を立てて実行し、そこからお互いに「思い」を共有していきましょう。

これがバドミントンの奥深い、楽しいところだと思っています。

-ひとこと-

「後衛からの攻撃はやはり高さも必要である」と、アドバイスを受けました。

なるほど!と、練習でジャンプして打とうと試みました。

しかし…飛べないのです。

あまりにもバランスが崩れて、連続で打てない自分がいました。

何事も、やはりいきなりはできません。

普段の小さな積み重ねからしかできないのだと、改めに感じてます。

みなさん、共に小さな経験を積み重ねていきましょう!

この記事を書いた人有田圭一有田圭一
バドミントンの名門校として有名な、「東大阪大学柏原高校」バドミントン部元顧問 バドミントン協会公認コーチ 短期間で、選手を劇的に成長させるその指導手腕が注目され、 これまで数多くのバドミントン雑誌で取材を受ける。 また、バドミントンの技術研究と、効果的な上達ノウハウの普及活動に余念がなく、 全国のバドミントンプレーヤーに人気のサイト、「バドミントンアカデミー」を運営。 選手としては、中学から大学在学中まで、バドミントンをプレーしており 個人戦で、継続的に全国ベスト16~32の成績を残した、優秀な選手でもあった。 シニア選手としても活躍し、全日本はもちろん、世界シニアにも出場している。
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