【岩垂コーチ】選手主体のチームで動くことの重要性
今回は、前回の「毎日の行動と準備の大切さ」に続き、バドミントン指導における「選手主体のチームで動くことの重要性」についてお伝えします。
自ら考え、行動できる指導
時代の流れと共に、スポーツ界においても指導の在り方が重要視されている昨今、バドミントンでも「選手主体のチームづくり」についても練習に訪れた指導者や先生方によく質問をいただきます。
選手主体のチームに育つと、計り知れないほどの効果があります。
主体とは物事や組織などで、その中心部分をなすもの。
チームや部活動の中心は選手や生徒。
その選手や生徒が自ら行動し、より良い組織にしていくために自分たちで考えて切磋琢磨して、結果を出していくのが選手主体のチームです。
そういうバドミントンチームの方がお互いを励まし合い、弱いところを補い、総合的に強くなっていきます。
チームを構成する核となるのが、選手や生徒一人ひとりの考え方であることは言うまでもありません。
常に考え続ける選手や生徒は、自らの知識と経験から考えを導き出し行動するようになり、チームメイトを思いやれる気持ちも育める。
小さな成功や失敗を繰り返しながら、知識を深め経験値を上げることで考え方も自然と向上していきます。
認知能力と非認知能力
昨今では「非認知能力」の高さが重要視されるようになりました。
認知能力とは、読み書き計算などの数値化できるもの。
非認知能力は、独創性・想像する力・計画力・思いやり・やり抜く力などで情緒と呼ばれるものです。
認知能力だけが高いチームは、その場その場で勝つことにはこだわりが強くなりますが、
計画性乏しく、負けを他の人やことがらのせいにして自分を通してすべてが起こることが認識できなくなります。
非認知能力だけが高いチームは、なあなあの関係を思いやりだと勘違いしてしまいかねない。
最高の「選手主体のチーム」には、練習量などの数値化できるものと、チーム全体の情緒能力が必要となります。
何を教え、何をどのように考えさせるか
しかし、現在の日本のスポーツ界においては「指導者主体のチーム」づくりの方が多く存在しているのが現状です。
従来からあるこのやり方でも結果を出すことはできますが、選手や生徒を育てる立場であるジュニアの指導者や先生においては、選手や生徒の将来の姿を常に考えてバドミントン指導にあたる必要があります。
バドミントンのジュニア期に自ら考えて育った選手や生徒と、常に指導者や先生の指示で育った選手や生徒では、将来どのような違いが生まれると思いますか。
また、選手や生徒が自ら考えいきいきと行動するチームと、言われたことを言われたまま行うチームとでは、どちらが魅力的で選手や生徒の将来が明るいものになるでしょうか。
ジュニアチームや部活動でバドミントンを行う選手や生徒は、バドミントンの技能レベルはもちろん、体力や性格等、みんな違っている多様な選手達が集まってきます。
この状況の中で、選手主体のチームづくりを行うことの難しさを感じているバドミントン指導者や先生はとても多いのではないでしょうか。
ここで大事なのは、選手や生徒に何を教え、何をどのように考えさせるかです。
バドミントン指導者の言ったことだけを行うチームや先生が押し付けてしまうチームは、教えすぎが原因となることも多いです。
教えるとはできるようにさせることです。
できるようにさせることは基礎基本であり、そこから発展、応用させていくのは選手や生徒の役目です。
物事の基礎基本は指導者や先生が教え、修得した基礎基本である知識や技術を活かして考えるのを選手や生徒に任せることで大切な技術と共に非認知能力も育ち、自らが考え行動するようになっていきます。
- 「どんなバドミントンチームにしたいか」
- 「どういう姿で練習に取り組むことが目標達成につながるのか」
- 「準備や片づけをどう行うことがバドミントンの上達に結びつくのか」
- 「強くなるため上手くなるために必要な行動はどんなことがあるか」
- 「ロングサーブはどんな時に有効でどんな時に打ちづらくなるか」
- 「声を出すとどんな良いことがあるのか」
など、選手や生徒の将来を見据えた時に、良質な質問により選手や生徒に考えさせると良いことはたくさんあります。
しかし、そのようなバドミントンチームに育てたいと指導者側がわかっていても、なかなかできないというのが現状です。
それは、「時間が無い」「選手だけに任せては結果を出していくことはできない」という言葉や思いで片づけてしまっていることも一因です。
だからこそ、普段の練習時が大事であり、練習計画を立てる中で、何を教えて何を考えさせるかを明確にして、その時間配分についても緻密に計画することが重要です。
指導では「良質な質問」を心掛ける
バドミントンの練習することの重要性、チームがまとまっていることのメリット、時間を守ることの大切さ、それらの意味を普段から繰り返して選手たちに伝えていくことで選手たちは次第に変わっていきます。
指導者や先生が声をかけなくても時間になるといきいきとした表情で選手や生徒が集まり、練習メニューの目的を話せば、あとは選手や生徒がグループ分けやどのように行うかを考えて素早く行動できる。
さらに、メリハリをつけて集中して練習に取り組むことができるチームは、選手主体のチームであり魅力的ではないでしょうか。
良質な質問により選手や生徒に考えさせることで、自分の知識と経験から考え行動する力が育ちます。
また、考えることで思考力も高まっていきます。
思考力は、どんな状況にも柔軟に対応できる選手や生徒を育てることにもつながりますので、指導者である我々は、選手主体のチームづくりを行うために、教えることと考えさせることを常に意識することが重要です。
日本のスポーツを支えるジュニアの指導が、みなさんの力によって良い方向に変わっていくことを願っています。
長野県の松本・塩尻地域を中心に、茅野・諏訪地域や千曲・上田地域でも活動するバドミントンアカデミー、「ミンピーベーサー」のヘッドコーチを務めている。現在、園児から高校生までの子ども達が、自分の目標達成や夢に向かって切磋琢磨しながら、それぞれの特性や個々の実態に応じた指導を行っている。さらに、バドミントンのレベルアップだけでなく、メンタルコーチとして人としての生きる力を高めることにも力を入れて活動している。
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